●「ロックフェラー対ロスチャイルド」(アメリカとイギリスの対決)という観点から国際情勢を分析している専門家は、先に紹介した藤井昇氏以外にもいる。早稲田大学法学部出身で、現在、「副島国家戦略研究所(SNSI)」を主宰し、アメリカ政治思想・社会時事評論などの分野で活発な活動をしている副島隆彦氏である。
氏の本の中で、この「ロックフェラー対ロスチャイルド」について具体的に説明されている部分を抜き出して、ここに「参考データ」として保管しておきたい。(とりあえず、2冊の本を参考にしたい)。
(左)『堕ちよ! 日本経済』副島隆彦著(祥伝社)
(右)『「実物経済」の復活』副島隆彦著(光文社)
※ 以下の文章は、副島隆彦氏の著書『堕ちよ! 日本経済』(祥伝社)と、
『「実物経済」の復活』副島隆彦著(光文社)から抜粋したものです
(各イメージ画像とキャプションは当館が独自に追加)
■■日露戦争、関東大震災で疲弊した日本を救ったのは誰か?
世界経済において重要なことは、その金融支配をめぐって、ロックフェラー系統とヨーロッパ・ロスチャイルド系統との闘いが、いよいよ激しくなっているということである。ニューヨークの金融財界をすでに制圧しているのが、ロックフェラーの系統である。老舗のロスチャイルドは、ヨーロッパでも相当に劣勢に回っている。
もともとロックフェラー家は、1910年代に始まったオイル・バロン(石油王)であるから、鉱物資源や実物経済系の資本である。それに対して、ヨーロッパの金融資本家(銀行業)から始まり、200年前の開拓時代と独立期のアメリカの代表的な企業群の経営まで押さえていたのが、ロスチャイルド家である。
石油王ジョン・D・ロックフェラー
(1839〜1937年)
最も格式があったアメリカの財閥は、ヴァンダービルト家である。その他にカーネギー=メロン財閥系や新興のハワード・ヒューズや、デュポン家がいる。モルガン財閥は、アメリカに200年前からある名門企業の株式の多くを持っているロスチャイルド系の大番頭格である。「金融王」J・P・モルガンは、当然に、ロスチャイルド系である。これが、最近は、同様にニューヨークの金融部門においても、かなりロックフェラー系に押しまくられているというのが、現在の世界経済の相貌である。
金融王J・P・モルガン
(1837〜1913年)
〈中略〉
日本の1904年の日露戦争や1923年の関東大震災の際に、資金を日本政府に供給してくれたのは、ロスチャイルド=モルガン連合である。日本政府の国債を彼らが引き受けて助けてくれた。この事実ははっきりしている。
そしてハリマン財閥(アベレル・ハリマン)や、ジェイ・グールドらのレールロード・バロン(鉄道王)と呼ばれた人々が、その後、日本が中国から租借した南満州鉄道の共同開発を日本に持ちかけ、日本と一緒にやろうとした。ところが、それがロックフェラー系統(日本のその代表が、小村寿太郎)の邪魔にあって、うまくいかなかったという史実がある。
この時期に、明治の元勲である、伊藤博文と井上馨は、「日英同盟」に強く反対しつづけたのである。この二人は、「日英同盟」ではなく、「日英独三国同盟」にこだわったのだ。「日英独」によるロシア包囲網戦略を主張したのである。これに対して、セオドア・ルーズベルト=ロックフェラー系から、横やりが入った。そして、「日英同盟」は20年間で、上手につぶされた。
このあと、日本は、ヨーロッパとの連携を失って、孤立し、戦時体制へと流れ込んでゆく。
第26代アメリカ大統領
セオドア・ルーズベルト
■■世界史を作ってきた「二大勢力の対立」
ロックフェラー系の存在は、このころから、延々と日本へ影響力をおよぼしつづけている。そして、この対立がアメリカとイギリスの対立として表われ、日本は第二次世界大戦の世界の渦に巻き込まれていった。
あの大戦の背後には、東アジアの覇権を争うイギリスとアメリカの対立という真実があったのだ。
イギリスとアメリカの国家間対立という問題とともに、ロックフェラー系と、ロスチャイルド系の対立がある。日本人はすぐ、知識人層までが「アングロ・サクソン資本主義」などという愚かな言葉を使う。このために、これまで、イギリスとアメリカの対立と抗争、という大事な要因を分析する目を、まったく見失っている。長く続いたソビエト共産主義、あるいはフランス、ドイツとの対立にだけ本質があるのではなく、イギリスとアメリカの間の激しい闘いというところに、世界史の真実を見なければいけないのだ。
VS
20世紀に入って、イギリスのアジア覇権が衰退して、アメリカがそれに代わって入ってきた。まず、1898年の「米西戦争」で、スペインから奪い取ったフィリピンを拠点にして、アメリカはアジアに進出、中国にまで来た。この時期にこの英米間の覇権争いの綱引きの隙間を突いて、日本が無自覚に「大東亜共栄圏」という巨大な膨張をしたのである。そして米ソに挟撃されて敗戦した。
だから、1980年代後半の、あの日本のバブル経済も、これと全く同じことであったと考えるべきなのだ。
1991年12月にソビエト・ロシア(ソビエト共産主義)を崩壊させて、アメリカは冷戦に勝利した。このときまでに、ベトナム戦争その他で、アメリカは大変な軍事費と経済的な出費に追われて、経済的にへとへとに疲れきっていた。米ドルは下落をつづけた。このときに日本が、勝手に浮かれて金融・経済的な大膨張を、東アジアで行なった。アメリカは、「これを必ず潰してやる」という動きに出た。アメリカ財務省が主導した、日本のバブルの破裂がうまい具合に仕組まれたのである。
こういうことから類推すれば、大きな世界史の動きの中における日本が、どのように見えるかが分かるであろう。
〈中略〉
■■ロスチャイルド=モルガン家
広瀬隆氏の本からも分かる事実は、やはりロスチャイルド=モルガン家が、古くからアメリカの各産業部門を代表する、開拓時代の名門企業群の株式と金融株を、今でも多く持っているという事実である。
たとえば、あの「FRB(米連邦準備制度理事会)」は、歴史的には「アメリカの中央銀行」を改組したもので、株式会社の形をとっている。そして、その株式の過半数をロスチャイルド家の系統が握っている。グリーンスパンや、アル・ゴア副大統領も、厳密にはロスチャイルド系に分類される。このあたりの錯綜した、財閥系の派閥分析は、かなり難しいのだが。
連邦準備制度理事会「FRB」
そこへ1920年代から、出遅れたかたちでロックフェラー家が猛然とニューヨークの金融業に進出してくる、という構図になる。これで、内部で複雑に抗争し合うニューヨークの金融財界・金融ビジネス界ができあがっているのだということが、如実に見て取れるのである。
さらに言えば、アンドリュー・カーネギーが興したカーネギー家のようなアイアン・バロン(鉄鋼王・ピッツバーグが本拠地)、ジェイ・グールドやアベレル・ハリマンのようなレイルロード・バロン(鉄道王)、デュポンのような「化学王」、そしてヴァンダービルト家のような鉄道と軍事物資輸送から始まった古い家柄のような、「アメリカ民族資本」が勃興して、現在のアメリカの資本主義が形成されたのである。
■■ロックフェラー家の"一大キャンペーン"
ロスチャイルド家は、この200年間にイギリス貴族集団の中に、6つの伯爵家を築き上げた。
それらのロスチャイルド系の貴族たちが、繊維業や製鉄業などの初期のアメリカの企業群を起こし、金融業を起こしたのである。だから、ロスチャイルド家の系統が、アメリカの企業群の土台を、今でも握っているのだ。
ロスチャイルド家の紋章
それに対抗して、「アメリカ民族資本」の形で、ロックフェラー系を筆頭にして、巻き返しに出たのである。そうやって、1920年代を境にして、アメリカ合衆国は、大英帝国の支配から脱出していった。そして、世界大不況の最中の1930年代から、自らが、世界覇権国になってゆく。
それが政治・外交的にも、世界金融体制的にも、はっきりと決着がついたのが、1944年7月の「ブレトン・ウッズ会議」である。この「ブレトン・ウッズ体制」で、IMFと世界銀行が出来た。だから、これを、「金ドル体制」とも「IMF体制」とも呼ぶのだ。イギリス代表、ジョン・メイナード・ケインズは、アメリカ全権のマーシャル財務長官に押し切られた。
その後、1971年のニクソン・ショック(ドルの金との兌換停止)で、米ドルの信用が崩壊した。このときから、「金ドル体制」は終わり、その後は、「修正IMF体制」となった。より正しくは、「米ドル紙幣(紙きれ)体制」と呼ぶべきなのだ。世界中にあふれた米ドル紙幣の信用は、今なお危機の中にある。
〈中略〉
ロックフェラー家については、さかんに「ロックフェラー家は、ユダヤ系ではない」というキャンペーンが世界的に張られ続けている。ロックフェラー家は、もともと、スコットランド系のプロテスタントの、バプティストの敬虔な家柄である、という説を流す人々がいる。これは日本国内にもかなり広く宣伝されている。ある特定の人々がその係を務めている。日本のちょっとした訳知り知識人たちは、そうした人々から強く吹き込まれているので、大きな事実を見失ってしまう。
このことは、そもそもユダヤ人とは何か、という問題に関わるのであって、「伝統的に毛皮商人や酒類販売業や金融業系の商人をやってきた人々」のことをユダヤ系と言うならば、ロックフェラー家は明らかにユダヤ系である。
こういう事実に対して、怯えて、恐れて書かなかったり、知らないふりをすること自体がおかしいのである。わずかでも「ユダヤ系の人々」という言葉を使うと、すぐに陰謀論者扱いして忌避する。その割には、人のことを陰謀論者のように見なす人々ほど、それらの本をひそかに熱心に読んで信じ込んでいる輩(やから)が多い。
日本の言論人・学者たちは、小心者の上品ぶった怯え根性の、文明の周辺属国特有のインテリの精神構造をしている。私は、政治思想分析から入ってきた人間であるから、いいかげんな俗説や、くだらない質の悪いレベルの「ユダヤ陰謀論」の類などに動じることは一切ない。および、人をユダヤ陰謀論者として嘲笑することで知識人ぶっている人々がいるが、その人々自身が自分の知性の程度を、周りから検証された方がいい。
私は、この金融・経済ものの本では、政治思想や政治外交問題を扱うことはできないので、興味のある読者は、私が書いた他のアメリカ政治思想ものの本を参考にしてほしい。
■■われわれが連帯すべきアメリカ人とは?
グローバリストたちの本質は、世界統制経済主義者であり、「大きな政府」政策である。彼らは個人(自己)責任の原理をかなぐり捨てる。日本に無理やり強要して、「公共事業をもっとやれ」とか「銀行を公的資金で救済せよ」という統制経済をやらせている。そんな内政干渉をやる権限が彼らにあるはずがない。そして、彼らの行きついた果てが、人権思想と平等思想で世界を覆い尽くすことである。
「人権思想」「平等思想」「デモクラシー」の三本立てを、世界中の人々に最高価値として信じ込ませる。自分たち自身も心底から信じているようなふりをして、実は、この「人権と平等とデモクラシーの三本柱」で世界を支配する。
もし、これらの大理念(大正義)に逆らう者たちがいるとしたら、それはかつてのナチスのヒットラーや日本の東条英機、昭和天皇・裕仁などと同じファシストである、という言い方で言論弾圧するのである。グローバリストの政治思想とは、そういうものだ。そして彼ら自身は、それら人権や平等やデモクラシーのスローガンの上の方にそびえ立って、上から操る。自分たちだけは、アバブ・ザ・ラー(above the law)、すなわち「雲の上」に存在するのだ。
彼らと正面から対決する勢力がアメリカやヨーロッパに出現し台頭している。アメリカの本物の保守派である中小企業の経営者たちや農場経営者の男たちが敢然と、彼らニューヨークの金融財界を握るグローバリストと戦っている。それが、一番大きく見たときの、アメリカの政治の動きである。
◆
私たちは、「人権、人権」と常に言いつのる人間たちの見苦しさと醜さを、正面から見据えなければいけない。「人権」と「平等」と「差別反対」を始終唱えて、自分たちが虐げられ、いじめられている人間の集団であることを「利権」にしている動きがある。グローバリストは、まさしくこれの世界規模での動きであり、つまり「人権屋」たちの世界的な動きである。だから、それらを、冷静に見極めている賢明なアメリカ人たちが、頑として大きな勢力としてアメリカには存在するのである。私たちは、この人々と連帯すべきである。
「金融システムを守るため」ならば、何をやってもいい、どんなことでも許されると、グローバリスト、および、その日本対策班(ジャパン・ハンドラーズ)および、日本国内の手先たちは、心底信じ込んでいる。
〈中略〉
■■三井と住友が組んだ意味の深さ